夏の養生は秋の体調に繋がります。 胃腸を守って夏野菜を美味しく!
夏は陽気というエネルギーを発散させるために毛穴や汗孔が開き、汗が出ます。
毛穴が開くということは家の窓を開けているのと同じ。
身体に害を及ぼす自然変化である暑邪・湿邪・クーラーの寒邪が体内に侵入しやすくなります。
開けっ放しの窓から泥棒が入ってくるかのように。
これらの邪気から身を守る防衛力が低下する夏は、実は四季の中でも特に養生に気を遣わなくてはいけない季節です。
暑いからと言って発汗している時に素肌をさらして風に当たると、頭痛がしたりカゼを引いたりするのはそのためです。
冷房の効いた部屋に入る時は汗を拭いてからにしましょう。
とはいえ、まったく汗をかかないでいると身体に熱がこもってしまいます。
そうするとこもった熱をさまそうとして、どうしても冷たいものに手が伸びてしまいます。
すると今度は胃腸の消化吸収する力が弱まり食欲も落ち、体力が低下して夏バテを起こします。
消化酵素は37℃で最もよく働きます。
冷たいものを食べたら食事の最後に熱いみそ汁などで胃の中を温めておきましょう。
夏は適度に汗をかくというのが自然の理に沿った養生法です。
熱のこもりと胃腸の弱りは秋になってから体調を崩す原因の一つにまでつながります。
一つ先の季節(秋)まで見越して今(夏)の養生を続けましょう。
夏野菜を冷やさず食べることが食養生の基本です。
トマト・玉ねぎ・パクチーのサルサスープ、トマトとスイカで熱を逃がし、緑豆ぜんざいで余分の水分と熱を排出、冬瓜とスペアリブのスープで夏バテ予防、夏野菜たっぷりのラタトゥユなど、夏野菜のオンパレードですが常温から温かい温度で召し上がってください。
夏の養生次第で秋冬の体調が違ってきます。
「湿熱」を溜めずに爽やかに
炎症系の病気の時には「湿熱」を溜めないようにするのが早く良くなるコツです。
湿熱とは気血の巡りを妨げる邪気の一つです。
胃腸の処理能力を超えて「飲みすぎ食べ過ぎこってりしたお食事」が続いたときに未消化物は老廃物となって「痰湿」を作ります。
それがやがて体の中で熱を持って「湿熱」に変わり噴出して炎症系の疾患を引き起こします。
炎症系の疾患とはアトピー・ニキビなど皮膚疾患、感染症、消化器疾患、副鼻腔炎・中耳炎・口内炎・膀胱炎など粘膜の疾患などです。
湿熱が溜まると舌には白~黄色の苔が厚く付き、ジュクジュクした皮膚炎、口臭・体臭、尿の色が濃くなり、イライラ、べたつく汗、などのお知らせが出ます。
治すにはこの逆をやればよいのです。
湿熱を身体から追い出す。
痰湿を作り出さない。
胃腸で処理できる量や質の物を食べるということです。
一週間スパンで、食べ過ぎたと思ったら翌日は胃腸をいたわり控えめにあるいは間食しないなど調整をしましょう。
湿熱のお知らせが現れたらゴーヤ・トマト・冬瓜・豆腐・シジミ・キュウリ・スイカ・大根・玉ねぎ・セロリなどがオススメです。
逆に摂り過ぎ注意なものは脂っこい物・生もの・冷たい物・甘い物・辛い物・味の濃いものアルコールなどです。
これから暑くなりますので体質的に熱がこもりやすい方は「湿熱」のお知らせが出たら清熱利湿の漢方もお試しください。
「春眠暁を覚えず」の対策
「春眠暁を覚えず」とは「春は夜が明けたのも気が付かず寝過ごしてしまう」という詩の一節です。
昼間もついウトウト、寝ても寝ても眠いとか、春独特の体調がありますね。なぜ、春は眠い、怠いのでしょう。
睡眠は自律神経の働きやバランスと深く関わりがあります。
自律神経は交感神経と副交感神経。
交感神経は闘争か逃走かというファイティングモード。
活動・頑張る・日中・興奮・緊張などと関係します。
副交感神経は休息のための神経。
夕方から明け方にかけてリラックス・穏やか・胃腸を動かす神経。
活動と休息のバランスが整っているのが健康状態です。
ところが春は寒暖差が激しく気温が10℃くらい急激に上がったり下がったりします。
また、環境が変化し、卒業・入学・就職・転勤・引っ越し・新しい人間関係に対応しなくてはなりません。
こんなときは自律神経のバランスが崩れやすいものです。
季節の変化に対応できるだけのエネルギーがたっぷり必要です。眠ることでそのエネルギーを補充しています。
季節と五臓の関係でも「春は肝」とかかわりが深いです。
中医学では「肝」は気を巡らせ、自律神経を調整し、血流をコントロールしている臓器です。
肝はストレスを一心に受け止める臓器です。
食べ物で肝を整え気の巡りを良くするものはパセリ・春菊・セロリ・三つ葉・柑橘類など香りの有る野菜・果物や酸味のものです。
肝を守ることで自律神経のバランスを整え、朝はパッと目覚め日中ハツラツの身体を取り戻しましょう。
春は就寝時刻を少し早めて十分で質の良い睡眠を心がけましょう。
この春一人暮らしを始める方へ
年度替わりのこの季節は、就職や進学で一人暮らしを始める方がその準備をしている頃ですね。
春は新しい出会いがあり、巣立ちの時でもあります。
何時の世も送り出す家族の心配は尽きないものです。
「元気に夢に向かって羽ばたいてほしい」
「事件や事故に巻き込まれないか」
「心を折られる出来事に立ち向かえるか」
「きちんとしたものを食べているか」
「慢性病を持っている人はコントロールが上手くできるか」
学業のことよりも心配事はただ一つ「心身共に元気でいるか」なのです。
さだまさしさんの「案山子」が心にしみますね。
一人暮らしの気楽さから自由を謳歌できますが、その代わりすべてが自己責任!
もし病気になっても自分で治す力「自然治癒力」を高めておけば安心。
それには「起きる時には起きる・眠るときには眠る・食べる時には食べる・食べるべきでない時には食べない」あたりまえの生活を送ることです。
身体がしっかり健康であれば、根気もやる気も出てきて前向きに発想することができます。
逆に体調が思わしくないときは、落ち込んだりマイナス思考になったり、人とのコミュニケーションがうまくいかなくなったりするものです。
心と身体は一緒です。
「心身一如」と言います。
一人暮らしを始める前に心配な体調があれば今のうちに解消しておきましょう。
野菜不足・ストレス対策・気血の充実・生理痛・便秘など養生法をご紹介しています。
お引越し先での漢方相談をご希望の方には、お悩みに合わせて得意分野の漢方薬局をご紹介しています。
元気に暮らせることが一番の親孝行ですね。
体質改善で花粉症を楽に!
春といえば花粉症! 毎年お悩みの方へ、今年は楽に過ごせると良いですね。
中医学では、花粉症は春の邪気「風邪(ふうじゃ)」が花粉と一緒に身体に入り込むことで起こる症状と考えます。
春一番が吹き始めると、風の邪気が身体に入り込みやすくなります。
すると身体の中にも同じように風が吹き荒れ、風は軽いので身体の上の方に舞い上がり症状をもたらします。
粘膜にバリアを築けない気虚体質の人は容易に風邪(ふうじゃ)の侵入を許してしまい、花粉症の症状も強く出やすいものです。
呼吸器系のバリアが弱い「肺気虚」の方はバリア機能を高める「玉屏風散」を花粉が飛び始める前から予防的に服用しましょう。
文字通り屏風を立てて風の邪気を退散させるというネーミングです。
また、消化器系に負担が大きい食生活を続けたり(いわゆる食べ過ぎ、飲みすぎ)、消化器系が弱っていたりする方は、水分代謝が上手くできず、停滞した水分が鼻水や涙となって体外に溢れてしまいます。
体表の邪気を追う払う働きのある食材である紫蘇が「肺」と、「胃腸の働き」を高めます。
逆に身体の中に鼻水の材料となる老廃物を作ってしまうものは、甘い物・冷たい物・脂っこい物・水分の摂り過ぎや夜8時過ぎての食事などです。
これらは花粉症を悪化させてしまいます。
症状は大きく分けて冷え(寒)の症状(滝のように流れる水っぽい鼻水・身体の冷え)と熱の症状(目の痒み・粘っこい痰・ドロドロの鼻水・顔やのどの火照り感)。
寒熱を見極めて漢方薬や食材を選びましょう。
過労や睡眠不足も悪化要因となります。
漢方と薬膳と養生次第で楽になることができます。
「補腎」で健康寿命を延ばしましょう
中医学の世界では、人の成長・発育・生殖にかかわるエネルギーを「腎気」と言います。
「女性は7の倍数」「男性は8の倍数」の年齢で節目を迎え、身体が変化するという言葉は薬用酒のコマーシャルでおなじみですね。
漢方の古典『黄帝内経』には女性の7歳から49歳まで、男性の8歳から64歳までの腎気から見た身体の変化が書かれています。
(年齢は数え年なので現代の年齢と少し違います。)
女性に関していえば7歳:歯が生え変わる
14歳:初潮を迎える
21歳:腎気が満ち、親知らずが生える
28歳:筋骨がしっかりして、身体が最も強くなる
35歳:肌の衰えや抜け毛が気になるようになる
42歳:顔がやつれ白髪が目立ち始める
49歳:閉経を迎え身体が衰える
この「節目の年齢」で自分の身体の変化が早まっていないかをチェックし「補腎」というケアでいつまでも若々しく健康長寿を目指しましょう。
「黄帝内経」に載っているのは女性49歳、男性64歳までですが、その後の長い人生を元気に生きていくには「補腎ケア」が必要です。
日本は平均寿命が世界一の長寿国ですが、「健康寿命(自立して、人の手を借りなくても生活していける年齢)」はどうでしょう?
男性の平均寿命は81.41歳 健康寿命は72.68歳
女性の平均寿命は87.45歳 健康寿命は75.38歳です。
その差の約10年間をいかにゼロに近づけるか、そのカギは「補腎」です。
女性は35歳以降、男性は40歳以降から年々衰えていく腎のパワーをコツコツケアすること(補腎)で、人生の曲線の下がり方を緩やかにすることが期待できます。
「腎は成長・発育・生殖を主る」にプラスして、現代では「腎は老化をコントロールする」とも言えるでしょう。
「すべての病気は腸から始まる」腸は免疫の要
「すべての病気は腸から始まる」とは、古代ギリシャの医師ヒポクラテスが紀元前3世紀に唱えた言葉です。
現代でもますます腸内環境と病気の関係が解き明かされてきました。
私たちの身体には約100兆個の細菌がいて、その大半が消化管に住み、免疫機能、解毒、炎症、栄養の吸収、自律神経のバランス、神経伝達物質、睡眠の質などを調整していると解明されてきました。
免疫系の大半が腸に有ります。
腸壁は皮膚を除けば外界ともっとも接しているところです。
口から肛門までは内臓ですが外界と接している一本の管です。
小腸の中の物質を血液に吸収するかどうかは腸が決めています。
必要なものは通し、血液中に入れたくないものはバリアが働いて取り込めないようにしています。
それがうまくいかない状態をリーキーガットと言います。
腸内には善玉菌・悪玉菌・日和見菌がバランスよくいる方が健康的です。
腸内環境が悪いと便秘や下痢だけでなく各種アレルギー、気持ちの落ち込み、各種感染症、皮膚トラブル、自己免疫疾患、リーキーガット症候群などの不調につながります。
良い腸内環境は腸内細菌のバランスが整うことで作られます。
菌は食事内容や食習慣、生活習慣で変化します。
冷たい飲食が多い方・糖質制限を頑張り過ぎてタンパク質が過剰な方・抗生剤を良く服用する方・制酸剤を長く服用している方・下剤を常用している方は特に腸内環境の正常化に取り組みましょう。
民族の違いによって腸内細菌のバランスも違います。
日本人は味噌・納豆・ぬか漬けを食べて腸内細菌を補うのが理にかなっています。
「足のつり」は体質改善で予防
寝ている時や運動中に突然起きる「足のつり」。
その痛みはとても強く、おさまるまで必死で我慢・・・という経験をした人も多いのではないでしょうか。
筋肉を伸ばしたり縮めたりするセンサーの働きが悪くなり、筋肉が過剰に縮んでしまうことで起こります。
その原因は筋肉収縮の調整にかかわる「電解質(マグネシウムやカルシウム等)」の異常・冷えによる血行不良・水分不足・栄養不足・筋肉の衰え・加齢・筋肉疲労などがあります。
激痛には即効性のゼリー状の漢方薬(芍薬甘草湯)でとりあえずしのぎましょう。
つったときだけの頓服です。
ふくらはぎがつったときはつま先に手をかけて手前に引き寄せ、ゆっくりとふくらはぎを伸ばしましょう。
仰向けに寝ている時は布団の重みで足の甲が脛と一直線になります。
その状態が長時間続くとつりやすくなります。
つったときの応急処置とともに体質別につりにくい身体を作っていくのも大切です。
中医学では「不栄即痛」=潤わざればすなわち痛むという言葉があります。
栄養や潤いや血液が足りないと痛みが出るということです。
もう一つ「不通即痛」=巡りが悪く患部まで栄養が届かなければ痛むということです。
二つ合わせて「栄養や血液や潤いが十分に有って、しかも隅々までそれらが血流にのって届けられればつりにくくなる」ということです。
ご自分の体質が栄養が足りないタイプか、流れが悪いタイプか、両方なのかを見極めて漢方で対策を立てましょう。
糖尿病・肝臓・腎臓・神経などの何らかの病気が潜んでいる場合もありますので頻繁につる方は受診が必要です。
季節と内臓と感情の関係~~秋に、もの悲しくなる訳~~
季節の変化とともに気分も変わります。
春~夏は陽気が強くなりますのでワクワク・新しいことをしたくなります。
日本では新学期や新年度が4月というのも頷けます。
秋~冬は蓄える時期なので活動レベルが下がり、少しもの悲しい気分になったりします。
中医学では七情と季節と臓腑との間に深いかかわりがあると考えてきました。
七情とは怒・喜・思・憂・悲・恐・驚の七つの感情です。
これらの感情が強すぎたり、長く続いたりすると体調不良の原因になると言われています。
イライラ怒り過ぎると肝の機能が低下し気の巡りが停滞して「気が頭に上る」。
瞬間湯沸かし器のように頭が過熱して逆上します。
ワクワク喜びすぎると精神を集中させることができなくなり事故やケアレスミスを起こしやすくなります「気が緩む」と言います。
クヨクヨ思い悩みすぎると胃腸を損ない「気が結ぶ」
シクシク深い悲しみや憂いが続くと肺気が弱まり意気消沈。
長期にわたると肺が傷つけられ声に力がなくなり徐々に気力が低下し「気が消える」と表現します。
恐れ過ぎると腎気が下に漏れ失禁が起きたりするので「気が下がる」と言います。
驚き過ぎると腎が失調し、心のよりどころがなくなり混乱状態になるので驚きすぎると「気が乱れる」と言われます。
高齢の方や、妊娠中や子供時代は腎が弱りやすいので、ホラー映画やお化け屋敷などで怖い思いをしたり驚きすぎたりすると健康を損ねます。
季節と五臓も関係が深く、春―肝―怒 夏―心―喜 長夏―胃腸―思 秋―肺―悲・憂 冬―腎―恐・驚と関連します。
秋に物悲しく感じたりメランコリーな気分になったりするのはごく普通のこと。
それが「しんどい・憂鬱」まで進展したら対策が必要です。
「現代人の宿命「熱毒」を清熱解毒」しましょう
大昔、日本は冷えと栄養失調のために病気になる人が多かったです。
ですからおのずと身体を温めて、かつ栄養補給が養生の基本でした。
ところが現代は逆に「熱毒」を溜めやすい環境にあります。
立秋をすぎても猛暑日が続いているくらいですから。
「熱毒」とは身体に害をもたらす熱や不要なものを言います。
人間は自然界と釣り合いが取れて調和していれば健康になりますが、現代社会は地球温暖化、細菌やウィルスの蔓延などまた、生活においても高カロリー・お酒・ストレス・濃厚な味わいの物の食べ過ぎ・生活習慣の乱れ・睡眠不足などが原因となり体内に老廃物として熱が溜まりやすくなっています。
熱は多く溜まると組織に傷をつけ毒となります。
「赤い」+「炎症」+「熱感」が熱毒の溜まったお知らせです。
赤い皮膚病(アトピー・ニキビ・発疹・赤ら顔・痒み・化膿等)
各種炎症(発熱、喉の腫れ、口渇、口内炎、目の充血、免疫の乱れ等)
精神興奮や不眠や怒りっぽいなども熱毒の影響の場合もあります。
この熱をさまし、老廃物をデトックスするためには「清熱解毒」という方法を用います。
刺激の強い食物を避け、野菜など繊維質の多い食事で便通を良くすることが大切です。
余分な熱を便と一緒に追い出します。
疲れすぎないように、規則正しい生活と、早寝で熟睡もクールダウンに繋がります。
必要に応じて「清熱解毒」の作用のある漢方を用いることもあります。
清熱作用のある食材は苦い物・緑の食材・葉物野菜です。
ゴーヤ・小松菜・トマト・キュウリ・大根・スイカ・梨・ナス等夏野菜も熱をさまします。
緑茶・菊花茶・五行草茶などのお茶もおすすめです。
ただし胃の中は冷やしてはいけません。
胃の中はいつも37℃をキープしましょう。
寒い冬は温め、暑い夏は涼性の品で体内に溜まっている熱毒をさましましょう。