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「女性の体は7の倍数で変化する」

この言葉は随分知れ渡ってきたようです。
7歳で歯が生え変わり・14歳で初潮を迎え・21歳で腎精(この場合女性ホルモン)が充実し始め・28歳で腎精がピークになり・35歳で下り坂になり・ 42歳で白髪が見え始め・49歳で閉経・56歳で老化現象が進み・・・・という風に変化していきます。

初潮の年齢は現代では早めになりましたが、閉経は今も昔もあまり変わらないのには驚きです。閉経の前後5年くらいを更年期といいます。大体45歳~55歳くらいですね。
脳からのホルモンの指令に老化した卵巣が反応できずに性腺軸にパニックが起きている状態といわれています。脳の性ホルモンの司令塔の近くに、自律神経の司令塔があるために、そちらにとばっちりがいって、自律神経失調症の症状が現われます。

50代のこの女性も更年期障害でお悩みでした。
突然カーット暑くなり、顔に汗が噴出し、イライラ、ほてり、心臓がドキドキし、寝つきが悪くなり、不安感、寝汗が出るなどの症状に悩まされていました。

丁度子供さんたちが独立し、親元を離れ、ぽっかり心に穴が開いたような気分で寂しい思いをしていました。
病院にいっても、「更年期の症状でしょう」と言われ安定剤が処方され、「治まらなかったらホルモン補充療法がありますよ。」と言われました。漢方薬で何とかならないかとご相談に見えました。

この方の症状は「陰・陽」のバランスの乱れで典型的な更年期症状です。
中医学漢方ではエストロゲン・潤い・血液・筋骨・身体を構成している物質は「陰」に属しているとみなします。

それに対し、活動や働き・温める作用・プロゲステロン(黄体ホルモン)は「陽」に属すと考えています。
この方の症状はエストロゲンが年齢とともに減少し、身体を潤わせたり、熱を制御したりする冷却水の働き(陰)が弱り、見せかけ上、熱の症状が強く出てしまって苦しい思いをしていると考えます。
ホルモン減少は中医学漢方では「腎虚」といい「腎」が弱ると相克の関係にある「心」の高ぶりを抑えられずに動悸や不眠などの精神症状が出てくることがあります。
そこで「心腎陰虚」に使う「天王補心丹」とイライラを鎮める「逍遙丸」を服用していただき、陰を増やす食べ物や気をめぐらす食べ物やハーブティーなどを選んで召し上がっていただきました。まもなく症状は治まり、元気に安定した精神状態を取り戻すことができました。

このように中医学漢方では、身体全体から、身体の発している情報を細かく分析し、今、身体はどういう状態になっているのか、その原因は何なのか、を患者さんと一緒に探っていき、治す方法を考え、処方や食事の内容を決めていきます。

ですから同じ症状でもお一人お一人に処方が違ってくるのです。オーダーメード医療なのです。一緒に納得した上で治療が始まるのです。
更年期の症状に似ている病気で甲状腺の病気の場合もありますので、血液検査が必要な場合もあります。